雪山における基本は歩行技術だ。
歩き方をマスターすることが、雪山に慣れる最も重要なスキルと言える。
歩行技術
フラットフィッティング
雪面での歩き方は、登山靴の足裏全体を雪面に置くようにして歩くことが基本となる。これをフラットフィッティングと呼び、滑りにくい歩き方となる。
通常歩行する場合、かかとから着地するが、雪山では、足の裏全体で着地するようにして歩くことを意識する。この歩行技術は、アイゼンを装着しても同様で、雪面を歩く最も基本的な技術となる。
登りで傾斜が出てきたら、フラットフィッテングを意識すると、自ずと足はハの字に開くことになる。
キックステップ
登り斜面で傾斜がきつくなってきたときは、靴先を雪面に蹴り込み、ステップをつくりながら登っていく。ひざを支点にして、ひざより下で雪面に蹴り
込むのがコツで、つま先は水平よりやや下を向いていてもよい。蹴り込んだ足で立ち込み、次の後ろ足を一歩上に蹴り込んでいく。
この歩き方をキックステップと呼ぶ。大股にならず小股で歩くことを意識する。
トラバース
斜面を横切る(トラバースする)ときは、山側の靴のエッジを効かせて、谷側の足のつま先はやや開き、バランスをとりながら歩く。山側の足は進行方向に向け、谷側は斜面に対して水平か、やや谷側に向ける。山側の靴のエッジを効かせることがポイント。
下りの歩き方
下りの斜面では、かかとから着地し、腰が引けないように、前足に体重を移動する。ややガリ股になる。足裏を水平にして、かかとから落としていくイメージ。
以上が基本的な歩行技術であるが、これらを組み合わせた様々な歩行方法がある。
雪山では、夏山では使わない特殊な装備や技術が必要になってくる。
必要な装備やその特徴や使い方を解説する。
その中でも特に重要アイテムが、アイゼンだ。
装着方法
アイゼンスを装着するときは、必ず靴裏の雪を取り除いてから装着する。
またアイゼンを装着するときは手袋を装着して行えるようにしよう。
アイゼン装着時の確認事項は以下のとおり。
1.ワンタッチ、セミワンタッチアイゼンのビンンディングが登山靴のつま先のコバ、かかとのコバにしっかり入っているか。
2.登山靴とアイゼンが左右にずれていないか、かかとは浮いていないか。
3.バンドはねじれていないか。
4.アイゼンの締める留め金などは、足の外側にきているか。
アイゼンワーク
転倒や滑落の原因となるのは、アイゼンの爪同士やアイゼンの爪をアイゼンバンドやスパッツに引っかけて転倒することが多い。そのため、引っかけを防止するために、常に両足の間隔を肩幅程度に保ち、普段歩くときより、足と足の間を広く保つよう心掛けること。
また、アイゼンの爪を雪面に引っかけることもよくあるので、普段より気持ち足を高く上げて歩くよう意識する。
アイゼン歩行も、雪上での歩行技術同様にフラットフィッティングが基本となる。前爪以外は、アイゼンの爪全体が、雪面に刺さるように足を置くことが安定した歩行となる。
斜面がきつくなると、フラットフィッテイングを意識すると自ずと足先が開くようになる。さらに傾斜がきつくなるとガニ股になってくる。
さらに傾斜が増すと、フラットフィッテイングができなくなるので、直登を避け、斜面をななめ上に進むことになる。山側の足は進行方向に向け、谷側の足をフラットか又はやや谷側に向けると安定する。
急斜面を直登するときは、キックステップでステップを作りながら登るようになる。アイゼンの前爪を突き刺すようにして、登山靴はフラットになるようにして、ひざを支点にして、ひざより下で雪面に蹴り込む。蹴り込んだ足で立ち込み、後ろの足をリズムよく次の一歩として蹴り込んでいく。
以上が基本的なアイゼンワークとなるが、この足の運びと、ピッケルワークが組み合わさって、一連の動作となる。
※春山など湿った雪質のときには、アイゼンの裏に雪の塊が付着しやすくなる。いわゆる「雪ダンゴ」と呼ばれるものだ。これは転倒や滑落の原因にもなるので、ピッケルでアイゼンの左右をたたいて雪ダンゴをマメに落すようにしたい。
ピッケルはドイツ語。英語ではアイスアックスという。
雪山登山では、安全確保のための必須アイテム。投降時のバランス補助、雪や氷のカッティング、滑落停止、耐風姿勢等様々な用途がある。
ピッケルの各部位の名称と機能は次の通り。
ピック
細く尖った刃先の部分。雪面に刺したり、氷をカッティングする役割がある。初期制動や滑落停止の際に使用する。
ブレード
ピックの反対側の幅広の刃の部分。雪や氷を削る役割で、投降時のステップを作る際に使用する。
シャフト
柄の部分。カッティングや登攀時の握りの部分。
スピッツェ
柄の一番下の尖った部分。石突きともいう。歩行時のバランスの補助として雪面に刺さるよう尖っている。
ピッケルの持ち方
ピッケルは、通常、傾斜のない投降時には、杖として使用する。ピッケルの基本的な持ち方は、利き手でブレードを前にして、シャフトの真上を持つ。この持ち方は、滑落停止の姿勢にすぐに入れるという点で推奨されている。
急斜面の登高の際は、ピックを前にして握り、ピックを雪面に刺して、ブレードに荷重しながら登ると安定する。
尚、ピッケルが手から離れた際に、滑り落さないために、ピッケルバンドを使用することが必要で、ピッケルを持ちかえることができるショルダータイプのものを推奨する。
使い方
ピッケルを杖代わりに使用するときは、あくまでもバランスの補助であり、ピッケルに体重を乗せすぎないよう注意する。登行時は基本はあくまでもアイゼンワーク。
トラバースの際も、基本はアイゼンワークであり、ピッケルは山側の手に持ち替えて、バランス補助として使用する。
トラバース時に向きを変えるときに、ピッケルを支点にして、体の向きを回転するなどの使い方もある。
初期制動
斜面で転倒したときは、すぐにピッケルのピックを雪面に刺すクセをつけること。斜面を滑り出してからでは、体を止めるのは難しくなる。滑り出す前に体を止めるために、この初期制動の技術が最も重要。とにかくどんな態勢でも、ピッケルの持ち手以外のもう一方の手でシャフトを握り、ピックを雪面に刺すことである。下りで尻もちをついたときなどは、片手でも瞬間的にピッケルのピックを刺すよう心掛けよう。
滑落停止
初期制動でも止まらない場合は、すぐに滑落停止姿勢に入る。ピッケルの持ち手でないもう一方の手で、シャフトの下方を握り、上半身を半身にして、胸のあたりでピックを刺し、上半身の体重を乗せるようにする。ピッケルを胸から絶対に離さない、アイゼンが雪面に引っかけないようひざを曲げて足を上げる、シャフトを握った手は雪面から持ち上げるようにして、ピックの刺さりを利かせることがポイント。
初期制動や滑落停止は繰り返し練習することが大切で、転倒した時に瞬時に行えるようになりたい。
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