<疲れにくい山登りのポイント>
👉登りでのチェック事項
👉下りが苦手な方のチェック事項
👉リュックの背負い方
👉水分の補給方法
👉エネルギーの補給方法
登りのポイント
■歩くペースを知る→簡単な計算式で自身のバテないペースがわかる!
■歩く姿勢と足の運び→登山家に学ぶ体の軸と足の運び
■急登の歩き方→乳酸を貯めない登りの極意
■脈拍数から歩くペースを知る
山を歩くときのペースについて、初心者の方は歩くペースが速くなる傾向にある。これは、普段街で歩くのと同じペースで歩いてしまい、その結果すぐにバテてしまうことになる。
一般に、街や平地で普段歩く速度の半分のスピードで歩くのが目安とされているので、意識してゆっくり歩いてちょうどいいペースになる。
なぜ速く歩くとバテるのかというと、ペースが速くなると、心拍数が上がり、ある一定の心拍数を超えると血中に乳酸値が増加することにより疲労を感じるようになるからである。
一般にバテずに長時間歩ける人の心拍数の目安は、年齢に応じて以下の式で求めらる。
疲労しない目標心拍数(/1分間)=(220-年齢)× 75%
この式の意味は、最高心拍数の75%くらいが長時間歩けるペースだということ。
この式から、例えば60歳の方は、1分間に120の心拍数程度で歩けば、バテずに長時間歩けるということになる。(20歳ー150 40歳ー135 60歳ー120 と年齢とともに低下する。つまり60歳の方は脈拍数130のペースで歩くと疲れてしまうということになる。)
但し、心拍数には個人差があり、一概にこの式が当てはまらない場合もある。普段から運動している人は、高い心拍数でも疲労を感じないので、ここでの年齢は、実年齢ではなく体力年齢と考えた方がよい。
なので、歩くペースは、感覚的な目安を併用して調節することが望ましい。つまり「キツさを感じる一歩手前」のペースで歩くという意識が大切になる。
逆に言うと、このキツさを感じる一歩手前で歩いたときの脈拍数から、自分の体力年齢が測定できるということにもなる。
一度ご自身の歩くスピードをチェックしてみてはいかがでしょう。
■登山家に学ぶ歩く姿勢と足の運び
ペースの他に、上りで心掛けたいのは歩く姿勢。前かがみになりすぎないよう背筋を伸ばし、体の軸がぶれないようなイメージで歩くこと。足の運びは、下界で歩くときは、つま先で地面を蹴りかかとが浮くが、山では靴底全体を地面に置くように歩くことが疲労しにく歩き方のポイントだ。
登山家の竹内洋岳氏は「登山の哲学」という著書で、理想的な歩き方として、『二本の幅の広い線路の上をつま先が左右に振れないように真っすぐ歩く。体勢が傾いたりすると、元に戻そうとして、そこでエネルギーを使ってしまう。常に体の軸を一定に保ちながら、まっすぐ歩く』と述べ、『上げた足を地面ギリギリの高さでまっすぐ前に出し、足の裏全体をフッと地面に置くような歩き方。』と表現している。こんな歩き方が出来れば理想的だ。
■乳酸を貯めない急な登りでの極意
さらに、急な登りのときは、前に踏み出した足に重心を移す際、膝を曲げたまま次の足を踏み出すのではなく、膝は伸ばしてから次の一歩を踏み出すようにする。一歩一歩膝を伸ばすことを意識して登ってみよう。これは急坂での疲労を抑えた歩き方で、あまり語られない乳酸が貯まりにくい効果的な秘策である。
下りの極意
■下りでは登り以上に筋力が必要→筋トレのすすめ
■下りのポイント→一歩一歩の落差を小さくすること!
■下りでは筋力が欠かせない
登山では登りよりも、下りでケガをすることが多いと言われる。これは、登りでの疲労も蓄積し、足が体を支えきれず、バランスを崩したり、転倒したりすることが考えられるので、下りはより慎重に歩きたい。
下りでは登りほど心拍数は上がらないので楽に感じるが、登り以上に筋力を使っている。よく膝にくる、膝が笑うなどと言われるが、これは、伸張性収縮の反復運動による脚筋力の低下と強い着地衝撃(登りの2倍、体重の2倍)により、大腿四頭筋が体重を支えきれなくなる現象。
それだけ、下りでも筋力を使っているということだ。下りが苦手、筋力が弱いと感じている方は、下界での筋力トレーニングをおすすめしたい。⇒登山に効果的なトレーニング法
■下りの極意
下りのポイントは、
●ゆっくり、小股で歩幅を狭くして歩く。特に急な斜面や砂地の滑りやすい下りでは大切になる
●姿勢は、腰が後ろに引けないよう、多少前かがみになるイメージで歩くようにする。スキーで下るときのイメージだ。
●踏み出した足を、ドスンと落すと着地の衝撃が大きくなるので、膝で衝撃を吸収するように歩くことを心掛けよう。下りでは、ストックを利用することにより衝撃を和らげてくれるので、膝に不安のある方は積極的にストックを利用したい。⇒ストックの上手な使い方
最大のポイントは、着地の衝撃を出来るだけ小さくするために、大きな段差を小さく刻んでいくことだ。50㎝の段差があったら、これを25㎝づつに刻む方法を考えること。大きな岩を一気に降りるのではなく、大きな岩の横にある小さな岩をステップにして降りると一歩一歩の落差は小さくなり、結果的に着地の衝撃が小さくてすむ。瞬時に落差を小さくする一歩一歩が読めるようになると下りは驚くほど速く歩けるようになるものだ。
リュックを背負ったときのチェックポイント
■リュックの背負い方ひとつでバテなくなる→尻で背負う!
■バテないリュックの背負い方
リュックを背負ったら、リュックの背面と身体にすき間なくフィットするよう、ショルダーハーネス、ヒップベルトを調節する。リュックが体にフィットしていないと、荷物に体が振られバランスを崩したり、疲労の原因になる。
また、疲れないためには、背負うリュックの高さ(上下の位置)が重要だ。
リュックの底の高さ(底の位置)が、お尻の上にくるようにする。リュックの底が、お尻の下まで垂下っている方をたまに見掛けるが、これは長時間リュックを背負っていると、肩に負担が掛かり、疲労の原因になる。ショルダーベルトの上部と下部にあるストラップを調整して高さを調節する。
リュックを背負った時に今一度チェックしてみよう。
「どのくらいの水を持参すればいいですか」
■バテない水分補給の方法→登山に必要な水分量は簡単な計算式と求められる!
■バテない上手な水分補給方法
登山において、適切な水分補給は疲労を和らげる重要な要素である。
水分が不足すると体温調節ができなくなり、疲労や熱中症などの原因にもなる。暑いときばかりではなく、寒いときでも脱水は起こり、運動能力の低下や心臓への負担を増加させるので、季節を問わず細目な水分補給が大切となる
登山では、水はどのくらい持参すればよいか。
よく聞かれる質問だが、登山による脱水量=水分補給量と考えれば、以下の式で簡易的に求められる。
水分補給量(㎖)=体重 × 行動時間 × 5
例えば、体重50㎏の方が4時間行動した場合、1,000㎖lとなり、500㎖のペットボトル2本分に相当する。
運動の激しさや気温などにより脱水量は増減するので、この式はあくまでも目安として考えたい。
次に、飲み物はどのようなものがよいか。
水やお茶、その他飲料水など飲みやすいものでよいが、長時間歩くときや気温が高い時は、塩分の補給も必要なことから、スポーツドリンクをお勧めする。
水分の補給の仕方は、行動中は細目に摂取することが大事。また、行動を始める前に飲水しておくことも心掛けたい。
効果的なエネルギー補給方法
■どのくらい補給するか→登山に必要なエネルギー量も簡単な計算式で求められる。
■どのように補給するか→細目に摂取すること
■どのくらい補給したらよいか
登山のような有酸素運動では、体内の脂肪を燃やしてエネルギーを生み出している。脂肪を燃焼させるには、炭水化物が必要になる。そのため登山では炭水化物を定期的に補給することが重要になってくる。シャリバテという言葉があるように、食べないと筋肉への疲労が起きるばかりではなく、脳や内臓への負担もかかり、疲れの原因となる。
それでは登山では、どのくらいの食べ物を持っていけばよいのか。
行動中に補給が最低でも必要なエネルギー量は、以下の式で簡易的に求められる。
必要補給量(kcal)=体重 × 行動時間 × 5
例えば、体重50㎏の方が4時間行動するとき、1,000kcal摂取する必要があり、これはおにぎりで約5個に相当する。意外と多いと感じるのではないだろうか。この式は、水分補給の式と同じで単位が㎖かkcalかの違いなので覚えやすい。
もちろん、登り下りの度合いや荷物の重さによって増減すすので、この必要補給量も目安として考えてほしい。
■どのように補給したらよいか
補給の仕方としては、細目に補給することが大切となる。
登山では、山頂で昼食をまとめて食べることが多いが、山ではそれ以外でも細目に食べることが必要で、これが疲労を軽減するポイントとなる。山では行動食という言い方をし、行動中に食べることが推奨され、少なくても1時間ごとに、少しずつ食べていくのがよい。
疲労すると食欲がなくなり、あまり食べない方を見掛けるが、「上手に食べること」これも登山の大切な技術のひとつなのだ。
※このページは、山本正嘉著「登山の運動生理学とトレーニング学」を参考にしています。
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